トリチウムが海で十分希釈される保証がないと判明 魚介類、水鳥、周辺農作物への汚染

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 トリチウムの海洋放出が今更物議を醸していますが、よくよく考えてみると、本当に希釈が十分になされ、人の口に汚染された食品として届くことがないのかわかりません。なので、ちょっと調べてみました。

 結論から先にいうと、十分に希釈される保証は全くありません。それらの根拠として、確認されている事実だけをまとめて以下に記述します(参照) 

  1. イギリスのカーディフ湾という湾の近くにある、当時NYCOMED AMERSHAM PLCという社名で存在したヘルスケア関係の研究開発を行う事業所でトリチウムを製造しており、その事業所がトリチウムカーディフ湾へ合法的に排出。環境に対する影響調査を行ったところ、湾のヒラメで1.6万Bq/Kg、ムール貝で2万Bq/Kg、ゴカイで2.2万Bq/Kgの有機結合型トリチウムが検出された。
  2. カーディフ湾周辺の農産物からも、若干ではあるが自然状態ではまずない濃度の有機結合型トリチウムを検出。水鳥類からは1500~4.2万Bq/Kgの有機結合型トリチウムを検出。陸上の草で210Bq/Kgを検出。
  3. 続いて、2001年に発表された、セバーン・エスチュエリというカーディフ湾の近くの汽水域(?)の様な河口において、原発からの排水の影響調査を行った結果、ヒバマタ属の海藻から600Bq/Kg、ヨーロッパガイから2000Bq/Kg、ヨーロッパヌマガレイから1万Bq/Kgという濃度でH-3を検出(いずれも乾燥重量あたり)。大部分が有機結合型H-3。
  4. カーディフ湾を調べたレポートの記述では、このヘルスケア業者からの排出の減少とともにOBT汚染レベルは減少したが、排出が減らされたのは主にトリチウム水でありOBTではないとある。

 はい、生体濃縮かどうかは確認されていない様なのでその点は保留としたとしても、きっちり魚介類や水鳥、ひいては地上の農産物にまで溜まっています。

 生体濃縮というのは、まず微生物が放射性核種を取り込んでー、その微生物を魚介類が食べてー、みたいな連鎖の末に高濃度放射能汚染されることを指すと思います。ここで、生体濃縮がないと仮定すると、人類にとってさらに重大な事態となってしまうことにお気づきでしょうか?

 生体濃縮無しで水鳥が最大4.2万Bq/Kgも汚染されるってどういう状況でしょうか? 世界で最もゆるい日本のトリチウム排出基準に迫る数値ですよこれ。摂取したらアウトです。これはもはや、生体濃縮されて汚染濃度が上がるよりも悪い状況なのではと考えるのが自然だということになってしまいます!w

 また、特に気になるのが4についてです。もともとOBTが主に排出されていたことによって汚染レベルが上ったというのならわかりますが、レポートでは、主に排出が減らされたのはトリチウム水だと言っています。辻褄が合いません。

 

 HTOを生体が取り込んだときに体内でOBT化することは誰も異論がないわけだから、海に大量に放出されたHTOを生物が取り込むと、その何割かがOBT化すると考えられます。OBTは一度体内で出来上がるとなかなか外に出ないので、その間に食物連鎖でより上位の生物へ濃縮していくというシナリオはものすごーく自然な気がします。

 この生体濃縮は、マトモな論文であれば、「確認されていない」などと表現されているのでしょうが、巷にあふれる「ありえない論」も含め、非常に疑うべきものなのではないかと思います。