【書評】IT Text 自然言語処理の基礎 (2022年版)

 IT Text 自然言語処理の基礎 (2022年版)について。

 この本は、いわゆる天下り説明詰め込み本で、わかっている人向けには復習と新知識の学習用にちょうど良く、初学者にはきついだろう。
 日本の学者がよく書きがちな、初心者殺し本。
 現代的な深層学習ライブラリで用いられている計算グラフ等の説明もほぼされておらず、数ページ割かれているだけだが、最近のライブラリは計算グラフの理論と実装を自分で理解しなくても使えるから端折っていいでしょという意図はわかる。
 計算グラフから最も効率よく学べる書籍は斎藤康毅氏の「ゼロから作る~シリーズ」だろう(変換候補で氏名がすぐに出てこないところがつらい)。このシリーズは本当に素晴らしく、日本の宝であると断じて良い。
 本を出す世の中の研究者や学者には二種類おり、悪書を出す学者と良書を出す学者である。
ただしこれは、本記事の主題である書籍が悪書だと言っているわけではない。 「IT Text 自然言語処理の基礎」は、深層学習フレームワークの使い方に慣れている人が見れば、この本に書いてあるモデルからある程度実装できるようには書かれており、どういった処理や概念が使われているのかそれなりに網羅されているところは良い。 しかし何度も言うが、初学者がこれを読んで納得できるものだとは到底思えない。